毎日がしあわせになるためのいくつかのこと。
ただの雑文。

ひとことでいうなら、そういうことだ。
とひとりごちてみた。あまりに納得したので、小説の一本でも書けそうな気になった。
１０年前に観た映画の題名が、まだ心に残っているらしい。こんなときに不意に現れてくる。映画の内容とは全然無関係なのに。
　
そうだ、その通りだ。
と、もう一度心の中でつぶやいてみる。
頽廃的な空間。画面は古いＢ級映画。セックスと嘘とビデオテープ。ほんとうに、そんな感じだった。

CHECKOUT
　
　「今このときのための今までだったと思う」
　友人がくれたこの言葉を僕はこのごろ、身に染みて感じている。すべてのことが今に集結しているような気がしてならない。もう、最後なのだ。
　４組が好きだ。理由など、ない。ここは愛すべき生活空間であり、日常のありふれた陽だまりだ。皆の醸し出す雰囲気が、ただの教室を「オレらの教室」に変えている。４組の凄さは、この雰囲気にある。４組ならではの実行力も、ここでは自然の成り行きでしかない。それは非常識を常識に変える力、とでも言おうか。僕らは・・
　・・ずっと変わらないような気がしていた。気がつけば、違う未来に向かって歩き出そうとしている。ああ、そうだった。ここは仮の宿に過ぎない。偶然が縁となり、ほんの少し時間を共有しただけなのだ。それでもいつか、「高三の時な、」と語る日が来ると僕は思う。人生の一端がここで絡み合っていること、その幸せを忘れないでほしい。
　未来で再び出会うとき、今、この時代（とき）に戻れるように。
　
　
　＊高３のときクラス代表でクラス紹介を書きました。その時の文章。

天職だとは思ってないけど適職だとは思ってる
　
仕事内容に飽きてしまって結構楽にこなせてしまって　でもなんとなく居心地もよくて　そしてなんとなく堕落していっていると感じている
　
忘れないでほしいんだけど（と自分に言っている）
あたしがやりたかったのは多分「接客」であるし
それはレジ打ちみたいなすれ違いや相手企業との取引や説得や商売なんかではなく
やっぱり目に見えて誰かの役に立てるような
そういうことであったはず
ある程度のアパレル性と専門性と個人能力を要求されるマネジメント
自分の裁量でやりくりできるフレキシブルさ
を
実現できているんだから　人に不満をあれこれ言うより満足して楽しむこともできるような
そんな気はしてるんだけど
他のことがしたいなぁと思うのはなんでだろうね
　
この不況の時代で天職を見つけようなんてできると思ってる？
でもそうありたいと思ってる
こういう風に稼ぎたいというビジョンもないくせに

あたしはいま　人生でいちばん退屈な時期なんじゃないかと思う
悩みがないのが悩みみたいな　ものすごい贅沢を弄んでいる
７割方の満足は　それを幸せというのだろうか
したいことがないということは　なんて恐ろしいんだろう
つまらないと言っているうちは何をしてもつまらないことなんか
とっくの昔にわかってる
あえていうなら　なにもしたくない
なにもしたくないの
　
この中途半端な満足を棄ててまでしたいことを見つけてみたい

真っ暗な部屋に帰ったら最初に音楽を流すクセ
気に入った曲をいつもより大きな音量でかける楽しみ
服を脱いで化粧を落として素肌にＴシャツだけひっかけたような格好でお風呂を入れ
入れながら適当に夕飯をつくる
そうして　ふと思う
　
ひとり寝ができなくなったのはいつからだろう？
ぬいぐるみのクマは１５のバースディにもらった
抱いて眠るようになったのはいつからだろうか
　
ぬくもりを知ってしまったら引き返せない
私を抱きしめてくれるなら朝まで一緒にいて
目が覚めても隣にいるっていいなぁってあなたが言ったから
たぶんもう私はあなたから離れられない
　
こんな日に限ってアールグレイしかない
何度試しても気に入らない味
それなのに憎たらしいほどキレイに出来上がるアイスティ

　泣きたくなるようなかったるい昼間
　追い立てられる夢を見た
　
　いいわけなんかしない
　口にした瞬間にセンチメンタリズムに溺れてしまうなら
　黙ったままでいよう
　
　別れるとか別れないとか
　切ないだとか恋しいだとか
　本気だとか遊びだとか
　それと向き合ってしまったら　あたしは終わる
　
　裏切りも嘘も　片手間でも本気でも
　抱きしめてくれるなら　すべてを差し出したっていい
　だから　あたしなら　刺されたっていい
　死にながら　愛してると云ってやる

　香水が変わると男が変わったというのは、ほんとうなんだな、と私はハルカを見ながら思った。
　あからさますぎやしない？
　と私はハルカに言ったものだが、ハルカはハルカで、「プレゼントだったのよ」とほほ笑むばかりだ。なんとなく気まずいような雰囲気を口許に残して、私もほほ笑んでみた。
　運ばれてきたケーキセットは思いのほか甘ったるく、ハルカの香水と混じって眩暈がしそうだった。
　
　
　電話、してみようかな、
　と思って、
　そういうことをする私の方も、あからさまだ、と思った。
　傷心の彼を慰める、元恋人の友人。
　そこから始まる恋があってもいいじゃない？
「どうしたの。黙って」
　はっと我に返って、ハルカの視線から逃げた。
　なんでも。
　そう答えたものの、ハルカの勘の鋭さといったらなかった。ハルカが一口紅茶を飲む、そのわずかな沈黙のあとで、ゆっくりと言う。
「電話でもしてあげてよ」
　私が？
「そう、たぶん、待ってるから」
　
　
　そして、わたしは、やっとわかった。
　ハルカなりの気の遣い方なのだと思った。休日に呼び出して、わたしの好きなカフェでごちそうし、嬉しそうに、近況を話す。「別れたの」という重苦しい言い方でも、「ゆずってあげる」という傲慢な言い方でもなく、「好きだったんでしょ」と問い詰めたりもしない。
　あとは好きにやってよ、お膳立てはここまで。
　そういう爽やかな告白。それが、わたしの為であり彼の為なのだと思った。
　
　
　
　苦々しく笑った。
　なんか、泣きそうになった。ハルカがいちばん、つらかったに違いないのに。
「うん、でんわしてみるよ」
　なぐさめてやってよね
　そうハルカは言って、わたしのカップに三杯目の紅茶を注いでくれる。
「ミルクティに」
　わかってるわよ、とハルカが苦笑して、ミルクを渡してくれた。
　苦い紅茶と甘いミルクが混ざっていく。
　新しいハルカの香水の匂いにも馴染んできていた。