ロストパラダイス


賞味期限切れの冷凍されたパンがスーパーに並ぶ
新聞が1週間分遅れて届く
最新の情報はテレビかネットで FAX新聞なんてものがあるのかと知る
桃太郎じゃないトマト ひどく懐かしい夏の味
野性のヤギ 崖をかけていくたくましさ
最初のヤギは ペリーが連れて来たんだって

ひるやすみがある という 驚き
東京電力も昼休み

おが丸の入港前日が定休日 おが丸の出港翌日が定休日

日常に無縁な場所 と私たちは思う
でも多分ここを日常にすることは とっても大変なのだろう思うのだ
沖縄のひとは本州のことを「本土」というけれど 小笠原のひとは「内地」という
それほどにここは故郷となりえない 都会の人々に依存した生活
そしてそれゆえにここは楽園で 25時間の長い船旅はここを聖地にしてくれる

30年前から議論されている飛行場計画
父島の山を切り取ってつくる それは
島に飛行場があるというよりは飛行場が全ての島にさえ思えるほど
だけど 生活物資のこととか急病人のこととかを思うと
小笠原の人達がどれほど飛行場ができるのを切望しているのかわかる
でも
飛行場ができたらきっとここはもう 楽園じゃない気がする
そして もうすぐ 飛行場はできる

次にまた小笠原に来るとしたら飛行機で来るのだろう
でもそれはもう
今の小笠原では決してなくて
それがわかってしまうことがとても哀しい
飛行場が出来る前に来られて
ほんとうによかったと
思う


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