いつもの路地裏で

お父さんの靴を履いた男の子が
とっとことっとこ走り出してきて
目の前ですてんと転んでしまった
痛みをぐっとがまんして立ち上がり　またとっとこ走り出す
その顔が笑顔だったから
急に連れて帰りたくなってしまった
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2004年06月29日(火)

水無月風待月蝉羽月鳴神月松風月焦月炎陽

肩に伸びた髪を切ろうか切るまいかと玩んでいる
前髪を切って降ろしたら急に夏になったみたいだ
遅い衣替えも済ませた
模様替えもした
週末は単衣でも着てあやめ祭りに行こうと思う
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2004年06月23日(水)

片手に頭痛薬

真っ黒い爪の女子高生が隣に座って
私は黙ってその爪を切り落としたくなるような衝動を窓から外に放り投げた
氷の溶ける音が聴こえる
無音の中でじっとしているとまるで全く時間が進まないような恐怖に囚われるから無意味に音楽を流す
４分１３秒過ぎたことだけは分かる
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2004年06月21日(月)

わからないひとね、

そのことはもう終わったのよ
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2004年06月18日(金)

探しているのは

過去のことではなくて現在のこと

雨のように流れる音楽の下で
私は涙のかわりに沈黙する
微熱に浮かされながらあなたを求める
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2004年06月16日(水)

そうして眠りにつく

あなたの親指をちいさなこどもみたいに握りしめて
片手には甘いタオルケットを抱えて
眠りに落ちる途中で時計は１２時を回った
眠っている頬にできるだけ優しいキスをする
おたんじょうびおめでとう
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2004年06月15日(火)

火曜日の帰り道

ぽっかりと空間が拓けて、そこだけ懐かしい匂いのする土が顕れている
すっかり均されたその土地に確かにあった建物はなんだったろう
毎日見ていたはずなのに思い出すことができない
ここには一体何があった？

灯の落ちた小学校の暗闇から子猫の悲痛な声がする
高い柵の向こう
その子猫を見つけて拾ってあげたいという気持ちだけは抱えて
すたすたと帰る
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2004年06月08日(火)

Not Found.

昔のブックマークを見ていたら
今はもうわずかな接触もないひとの消息がそこから伺い知れる気がして
そこに底の見えない深い穴のようなものを見て
ためらいもなく全部消した

長いメールを書いた
いつかの瘡蓋を撫でるように長いメールを書いた
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2004年06月06日(日)

狭い影の中

図書館から出ると初夏だった。
帽子を目深にかぶっても輝かしいばかりの光と緑が目に飛び込んできて抗えない。
片手に余るほどの分厚い本を肩に担いで、公園を抜ける。
「弁護士会館はどこですか？」
不意に聞かれて、眩しそうな顔に出逢った。
この先を行ったところです
そう答えながら私は、俯いていても逃げられない、と思った。
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2004年06月04日(金)

満月の夜

藍色のとばりが降りてくる
白い雲は影のように筋になって立ちのぼっていく
風が西に吹いていく
この黄昏の短い時間を　あの日も見ていた
学校の渡り廊下
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2004年06月03日(木)

命知らず

むしろ私は
「自分の未来を捧げるほどに憎かったの」
と
言って欲しい

それがある意味で愛だとか
心中だとか
だからって殺していいとか
全く思わないけれども
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2004年06月02日(水)

雨が降っても嬉しくなくなってしまった

気持ちにブレーキがかかっていることは気づいているけど
もう私はフィルターを通してしか接することができないことも自覚している
前のように率直に気持ちを打ち明けたり、問い詰めたりすることを
敢えてしない
あなたが私を見るときにフィルターをかけているようにね
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2004年06月01日(火)

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